その時だった。



「あ!!隆ちゃん……?」


鏡越しに見えた悠亜さんの顔。


その視線の先には

私の愛する隆介がいたんだ。



「美亜、迎えに来た。本当にパンチパーマにしたらどうしようかと思って…」


隆介は、悠亜さんの視線にも気付かずに私に話しかけた。


そして、入り口近くのソファに腰掛けた。



「美亜…ちゃん。やっとわかった。そういうことかぁ…」

ほんのり赤い悠亜さんの頬は、日焼けなのか隆介のせいなのかわからなかった。



でも、隆介のお母さんの居場所を知ってるかも知れない人が

ここにいるってことがわかった。



隆介の『ゆうちゃん』はこの悠亜さんだったんだ。




「そりゃ、覚えてないよね。かなり昔だし。」


悠亜さんは、タバコに火をつける隆介を横目で見ながら笑った。


「隆介、かっこよくなったでしょ?」


私は、少し自慢気にそう言った。



「うん… 男っぽくなったね。もう隆ちゃんなんて呼べないね。」


悠亜さんは、チラチラとたまに隆介を見ながら私の髪を綺麗に切ってくれた。



「あのね…隆介のお母さんのこと何か知りませんか?」


いつの間にか、私のサイドの髪は短くなっていた。


「あ…そうだ。いなくなっちゃったんだよね、おばさん。私の母は結構連絡取ってたみたいだけど…今はどうかな?」


私は、髪を切られていることも忘れて立ち上がってしまった。

そして、悠亜さんの手を握り、頭を下げた。



「お願いします!!!お願いです。何か少しでもいいから教えてください。」


店内に響く声に、隆介も立ち上がった。



「美亜、どうしたんだ?すみません、俺の彼女が…」


隆介が悠亜さんに頭を下げた。



どこかで聞いたことのある優しい曲が流れてる。