「お母さん!! どう?」
パジャマのボタンも開けたまま、リビングへ急ぐ。
ソファに腰かけたお母さんは、膝の上にりゅーたんを乗せていた。
「美亜…… さっきね… 」
お母さんの声が震えた。
私はりゅーたんの顔を覗き込んだ。
さっきまでの顔と全く同じ。
大好きなかわいい顔をしていた。
「あのね… もう息…してないんだ。」
お母さんの声が
とても遠くから聞こえるようだった。
嘘…
嘘だよ。
だって
こんなにかわいい顔をしていて…
まだ目も少し開いてる。
フサフサと綺麗な毛並み…
「美亜… でもね、りゅーたん、全然苦しまなかったよ。」
自分の手の上で
りゅーたんが息を引き取った。
お母さんは
きっと
お父さんが死んでしまった日のことを
思い出してしまったんじゃないか・・・
私は
お母さんの膝の上のガーゼをそっと持ち上げて
自分の手に乗せた。
まだ動きそうだった。
本当に動いていないのか
わからない。
私は顔を近づけて
いつものようにりゅーたんの匂いを嗅いだ。
いつもの匂い。
まだほんのり温かい。
涙が
りゅーたんの背中の毛に落ちて…
染み込むまでに時間がかかった。