ソファでコーヒーを飲みながら、穏やかな時間を過ごす。
「ねぇ、隆介の昔好きだった人ってゆうちゃんって言うの?」
おばあさんから聞いた隆介の初恋の人の名前を口にした。
なんでお前が知ってんだ?って怒り出すかと思えば、隆介は懐かしい目をして頷いた。
「あぁ、懐かしい名前… つうか、お前なんで知ってんの?」
優しい顔のまま、私の頭をコツンと叩く。
「実は…また行ったんだよね。ちょっと前に… そしたらね、おばあさんに会ったの。隆介のことよく知ってる人だった。」
隆介は、タバコに火をつけて、窓から顔を出した。
隆介は、きっと今過去へ旅してるんだね…
隆介の子供時代へ…
懐かしい場所、懐かしい笑顔を思い出してる。
私は、台所へ行こうと立ち上がる。
ひとりにして欲しいんだなって感じた。
「美亜…座ってろ。」
立ち上がる私の腕を掴んだ。
唇に浅く挟んだタバコが今にも落ちそうだった。
器用に挟まれたタバコは風に揺れながらも、しっかりと隆介の唇にくっついてる。
いいんだね。
ここにいて。
私は、
隆介の過去に入ってもいいんだね。