鈴子は、私にはないものたくさん持ってる人。



私は、こんな風に泣けない。



きっと、無理して強がって、トイレやお風呂でしか泣けないんだ。




「健太ぁ…健太…」


健太の名前を叫ぶ鈴子の心の中は今、どんな状態?


さっきは、隆介のことしか考えられないって言ったのに…


「まだ、間に合うよ…健太、まだ鈴子のこと愛してるよ。」


今の私は、健太も鈴子も嫌いじゃないから、2人には幸せになって欲しい。

だけど、こんなこと言ってる私は、ただ自分の幸せを守りたいだけなんじゃないかって…

自分の為なんじゃないかって、感じるんだ。



「隆介のこと、そんなに好きだったの?」

鈴子は私の質問に、何度も頷いた。

過去に何があったんだろう…



私は鈴子の背中を撫でながら、言った。


「同じだね…私も隆介が大好きなんだぁ。こんなに人を好きになったの初めてなんだ。だから、すごく辛くて、どうしていいかわからないことだらけ…」


鈴子の泣き声が止まった。


涙で濡れた瞳を私に向けた。


「ごめんね… ごめんね…」


そう言いながら、鈴子はまた涙を流す。


「本当は、鈴子が怖くて仕方がなかったんだよ。いつ、隆介を奪われるか心配で、いつも怖かったんだよ。」


私は母親が娘に話すように、穏やかに話していた。

鈴子は、どう思っただろう。



もう…隆介をあきらめる?