何度この部屋に入ったの?
ねぇ、鈴子。
私よりたくさんここに来たことがあるの?
鈴子は
健太が旅に出たことをどう思ってる?
今、
誰に抱きしめてほしいの?
聞きたいことがたくさんあるけど、何も聞けない自分がいた。
鈴子のさらさらした髪を見つめた。
鈴子は、みーたんの小屋の前でしゃがみこんだ。
「ハムスターは、神経質な動物だから…結構弱いの。」
鈴子は振り向きもせず、話し始めた。
私に話しているのかみーたんに話しているのかわからなかった。
「病気なの?」
私の質問に、小さく頷いた。
そして、箱から母親ハムスターを取り出した。
「もうだめかも知れない…だから子供に会いたいかなって思ったんだ。ごめんね…」
目にいっぱい涙をためて、振り向いた。
「そうなんだ…やっぱり動物も人間と同じで、子供がかわいいんだね…」
金網越しに鼻先をくっつける親子の姿に胸が熱くなった。
「入れてあげたら?」
私は、彼女なんだって事…強調したくて、そう言った。
鈴子は小屋の中で走り回る親子の姿をじっと見つめながら、話す。
「ごめんなさい。彼女いるのに家になんか来て…ごめんね。」
耳に掛けた髪が少し落ちて、涙を隠した。