「あの…ハムスターが…調子悪くて…今、病院に連れて行ってたの。その帰りに…」


鈴子はそこまで言うと、目に涙を浮かべた。


隆介に会うための口実…



きっとそうだよ。



ハムスターを連れてきてることを知れば、隆介は鈴子を部屋に入れるよね。


きっと、何も疑わずに。


女の計算し尽くされた計画だってことも知らずに…





鈴子は目をそらしたままだった。


マンションの廊下には、冷たい風が吹いていた。



「一緒に隆介待ちますか?」


私は、小さな声でそう言った。


心の中が自分でもぐちゃぐちゃになっていた。



ここで、鈴子をこのまま帰した方がいいのか

じっくり話し合えばいいのか…



何がなんだかわかんない。



でも、みーたんとりゅーたんの母親であるハムスターの入った箱を大事に抱きしめる鈴子に不思議な感情も生まれていた。



同情…?

余裕?



もう私が彼女なんだって堂々と言いたかったのかも知れない。



鈴子は、遠慮して、帰ると言ったが私が何度が誘うと部屋に入った。