手紙をゆっくりと開き、隆介が読み始めた。


達筆な字で書かれた最初の一行…


『隆ちゃんは、元気ですか?』



それだけ読んで、私は涙が出てきてしまった。


何よりもそのことが気になっているお母さんの気持ちが伝わる。

かけがえのない大事な子供が元気でいるか…

お母さんに何があったかは知らないけれど、お母さんの愛だけは伝わる。


やっと手紙を書くことができたお母さんは、まずそれを聞きたかったんだ。



隆介は咳払いをして、天井を見上げた。

涙…こぼれないように、上を向いて…

ため息をついて、鼻をすする。


鞄から出したハンカチを手渡すと、隆介はハンカチを受け取らずに、トレーナーの袖で涙を拭いた。


「今…どこにいるんだろ… 別に恨んでねぇのに・・・」


隆介はそう言い、お父さんも頷いた。


「藤本さんちの奥さんが、しばらく連絡を取っていたらしいんだが・・・藤本さんも引っ越したからなぁ・・・」


お父さんはうつむいたまま、そう言った。


隆介は手紙を封筒の中に入れ、机に封筒をそっと置いた。

そして、お茶を飲み、時計に目をやる。


「そろそろ俺ら行くわ…また来るから、おかんにもよろしく言っといて!」



一緒に暮らしていた血の繋がらないお母さんのこと、おかん…って呼んだ。



隆介の優しさ。