お父さんは、台所からお菓子を持ってきてくれた。
「お前、たまには顔出してくれよ…隆介。」
お父さんは、隆介をじっと見ていた。
「こないだ、話してた彼女か?」
お父さんがチラっと私を見て、少し笑った。
こないだ?
隆介、私の事話してくれてたの?
「・・・いいよ、そのことは・・・」
隆介は、不機嫌な声でそう言うとお菓子を食べ出した。
しばらく沈黙が続いた。
部屋の壁掛け時計は、5分くらい遅れていた。
その時計をじっと見ながら、隣にいる隆介のお菓子を食べる音を聞いていた。
「あ…あれ、見るか?」
お父さんがポケットから出したのは、前に隆介が話してくれたお母さんからの手紙だった。
私はここにいてもいいのかどうか分からずに少し腰を浮かせた。
「いいから、座ってろ!」
隆介が私の肩に手を置いた。