「懐かしいなぁ、この駄菓子屋まだあるんだ。俺、毎日来てたんだ。」


改札を出た隆介は、子供のようにはしゃいだ。


「何か、買う?」


私が隆介に聞くと、またまたかわいい顔で目を輝かせた。


「おう、買おうぜ!!」




私自身も駄菓子屋さんが久しぶりで胸が熱くなった。


100円玉を握りしめて駄菓子屋に行き、たくさんのお菓子を買ったことを思い出す。


「おばあちゃんありがとね。」

隆介は耳の遠いおばあさんに大きな声でお礼を言った。


また好きになる。


隆介が好き。




「変わってないなぁ。この味……」


私と隆介は、懐かしいカラフルなゼリーを口に入れた。


隆介は、突然お母さんが消えて…毎日どんな風に過ごしていたんだろう。


どんな気持ちで、このゼリーを食べてたんだろう。



隆介が昔遊んでいたという公園のベンチに座る。


錆びて傾いたベンチは、少し私が動いただけで潰れそうだった。


「家、行ってもいい?」


隆介は大きなどんぐり飴を口の中で転がしながら言った。


「もう…誰も住んでなかったりしてな。」


隆介は空を見上げた。


「そんなことないよ。いるよ、絶対。」

私ったら、隆介の膝に手を置いて大声を出してしまった。

嘘や隠し事は疲れる。

「お前、どうしてそんなムキになってんだ?」


私は怒られることを覚悟して、正直に話そうと思った。


この場所に一人で来たこと。


隆介の家には、ちゃんとまた表札があって、ベランダには洗濯物が干されていたこと……



私は…隆介のお母さんを見つけたいと思ってるってこと。