何が嫌なのか、どうして泣いているのかすら本人にはわからない状態だろうな。

何かわからないけど、ただ悲しいんだ。


「もう…男の子なんだから。今日だけよ。」


と言い、お母さんがしゃがんで男の子を抱き上げた。


さっきまで響いていた泣き声が嘘のように消え、その男の子は嬉しそうに笑い出した。

物凄く素敵な笑顔で…


あはははって笑いながら、お母さんの首に腕を巻き付けた。


その男の子の笑顔を見ていると、私まで笑ってしまいそうになる。


良かったね…


抱っこして欲しかったんだね…


ただ、それだけなんだね。



お母さんに抱っこされるだけであんなに泣いてた悲しい気持ちもどっかへ行っちゃうくらい嬉しくなるんだ。



子供は素直だ。


泣きたいときに泣いて、笑いたいときに笑う。




隆介は、泣きたいときに泣ける胸がなかったんだ。

笑いたいときに、一緒に笑ってくれる人がいなかった。




隆介は、きっと人一倍甘えん坊な子供だったと思う。

本当は、甘えたくて仕方がないんだ。


時々、私に甘えるあの目は…寂しいって叫んでる。