『俺だって人間だから、眠れないこともあるよ。お前は俺をまだわかってねぇな…』


隆介の声はとても寂しそうだった。

抱きしめて頭を撫でたいと思った。


時計を見ると、もう深夜の1時を回っていた。



『会いたいね…そんな寂しい声聞くと心配になるよ。話して…』

少しだけ開けた窓から、尖ったような冷たい風が入り込む。

私の体を刺す風が、まるで隆介のように感じて、窓を開けたままにした。


『いや、いいんだ…声聞いたら安心したから。』

無理した元気な声が悲しい。

彼女なんだよ、もっと甘えていいんだよ。


『私だから話せないの?私がまだあんたをわかってないから?鈴子なら隆介をわかってるの?』

言いたくない言葉が出た。

かわいくない言葉達が、受話器の向こうの隆介の心を傷つけることはわかってた。


でも、本心だった。


『…また鈴子か・・・あいつはただのともだ…』

『嘘つき!!!』


隆介の言葉をさえぎった私の声。


嫉妬、不安…


隆介は悪くないのに…


しばらくの沈黙の後、隆介のライターのカチカチという音が聞こえた。



『ば~か!美亜のバカ。』


こういう所も好き。

こんな状況の中、改めて隆介に惚れ直す。


逆ギレしたり、怒って電話を切ったりしない。

その場を明るくしてくれるとこ、大好きだよ。