バスを見送ってくれる聖子さんの笑顔がバス停の灯りに照らされる。

その横で、美菜に手を振る橋本さんは、聖子さんにからかわれて、少し照れた表情になる。

たくさんの人がいるこの地球で、出逢える確立ってすごいよね。

毎日たくさんの人とすれ違うのに、好きになる人は一人。

その相手と出逢えた私達は幸せ者だ。


好きな人に出逢えないと悩んでる短大の友達の話を聞くと、自分は恵まれてるって思う。

だけど、そんな友達にも絶対私は言う。

『どこかにいるから!!もうすぐ出逢うって!!』 


隆介のおかげで美菜とも出逢えた気がする。

そして、聖子さんと悠亜さんにも出逢えた。

人の出会いってすごいよね…一期一会だね。


聖子さんに出会わなければわからなかった。

大人も恋に悩んでるってこと。

私達と同じくらい、恋に悩んで苦しんで涙を流してる。

大人になっても、何も変わらない。


それを知って、私は大人の人が好きになれたんだ。



満員電車でムカついてた親父にも、きっと大事な家族がいて…その親父を愛してる人がいる。

眉間にしわ寄せたおじさんも、家ではかわいい孫に目尻を下げているかも知れない。

難しい新聞を読みながら私達高校生を睨むOLも、私達のように恋に悩んだ時期があったんだよね。

進路に悩んで、親と衝突したり…自分の生きる道を必死で探してたはず。

見えている部分だけじゃなく、人の中身を見ろってお父さんの教えが、やっとわかった。


笑ってる人が嬉しいとは限らない。

無理して笑って、心で泣いてるかも知れない。


人の心を理解できる人になりたいと思う。

美菜や聖子さんや悠亜さんと出逢い、何となく、全ての人に親しみを感じられるようになったんだ。

チカンがくれた偶然の出逢いも、必然だったように感じられる。

人の優しさに触れ、人の痛みを知ったことで…私は少し素敵な女性になれた気がする。