手帳に『隆介とデート』って書き込んでから気付いたことがある。
11月3日…
私の誕生日だぁ。
アイツがそんなこと知るはずもない。
偶然だけど嬉しいプレゼント。
自分から言い辛いから、当日何気なく言ってみようかな。
本当は毎日でも会いたい。
だけど、会えば…きっとエッチしてしまう。
嬉しいような怖いような複雑な気持ちで…
ちょうど、隆介も毎日バイトだったから私も牧場のバイトを閉園時間まで入れていた。
バスに揺られながら、美菜の耳元でこっそり報告…
声の大きさには自信のある私でも負けちゃうくらい美菜の声は大きい。
「うっそぉ~~~!!!マジ?」
目が落ちちゃうんじゃないかってくらい目を大きく見開き、私の腕を掴む。
そのまま数秒2人で見つめ合う。
「すごいじゃん!美亜!やったじゃん!!」
落ち着いて改めて祝福してくれる美菜。
その手には…指輪が消えていた。
触れない方がいいのか迷ったが…
私の目線に気付いた美菜から切り出した。
「実は、昨日…橋本さんに彼氏いるのかって聞かれたんだ。やっぱ、指輪してるとそういう風に思われんだよね…なんとなく橋本さんには誤解されたくなくて…」
長年付けていた指輪のせいで、薬指には少し線が入っていた。
それをじっと見ながら…
「忘れたわけじゃないけど…新しい恋、始めようかな。」
「うん!!橋本さん…いいと思うよ!」
私は美菜の白い手を握り、肩を寄せ合った。
もう両想いであることは誰の目から見てもわかる。
バスの到着を待つ橋本さんは…
またもや美菜のことしか見ていない。