「冷蔵庫にチョコあるけど、食べるか?」


やっと隆介が私から少し離れた。


ほ…


やっと息ができる。


私は、何度も頷いた。



「俺が取りに行くか、美亜が取りに行くかどっち?」


ソファの上にあぐらをかいた隆介が嬉しそうな顔で私を見る。


…どうでもいいじゃん、そんなの。


だけど、すごく幸せなんだ。




どうでもいいことが隆介の手にかかると、物凄い出来事に感じる。



「俺が取りに行くなら、美亜は口で俺にチョコ食べさせて。美亜が取りに行くなら…俺が食べさせてあげる。どっちがいい?」



緊張で、何も考えられない。


隆介の言った二択が、どう違うのかさえわからない私は…

立ち上がろうと体を起こす。


「だ~め。行かさない。お前が取りに行きたいなら、俺の腕振り解いてみろよ!」


そして、隆介は私の体を優しく包み込む。


振り解いてろ、なんて言う割には、誰でも振り解けるくらいの優しい力。


でも、私は心地よいそのぬくもりに…


目を閉じる。



振り解くことは簡単だけど、もったいなくて振り解けないよ。




ずっとこうしてて…



大好き、隆介。