熱いからって2つのマグカップを隆介が運ぶ。
そんなささいな優しさが好き。
ソファの横のサイドテーブルにマグカップを置く。
ガラスのテーブルとマグカップはコツンと音を立てる関係。
なるべく音を立てないようそっと置く隆介の手が好き。
「着替えてくるから。」
寝室に向かう隆介を目で追う。
「何? 俺の裸見たい?」
隆介は真顔でそう言いながら、ベルトを緩めた。
「隆介のばか~!!!もう・・・」
私は、クッションを抱きしめながらコーヒーの湯気をじっと見つめてた。
鼓動が少しでも穏やかになるように・・・と気持ちを落ち着かせる。
寝室でガサガサと音がして、そのたびにまだドキドキは激しくなる。
「美亜ぁ~、こっち来る?俺のジャージ畳んでくれてありがと!」
やけに素直な隆介が、かわいい。
「なぁ~、美亜たん。こっち来いって。」
私は、聞こえないフリをして鼻歌を歌う。
マグカップに手を伸ばすものの、手が震えてコップが持てない。