「美亜… 襲っていい?」
隆介の腕の力がどんどん強くなる。
テレビも付けてない部屋はとても静かで、2人の呼吸する音だけ…
「美亜…どうせ、鈴子だろ?」
ハッとして隆介の腕を振り解いて、少し離れた場所から隆介を見た。
抱きついたせいで、顔を今初めて見た。
今日の服もかっこいい。
乱れた髪と、揺れるピアス…
「なんで…??なんでわかるの、隆介!!」
私は、隆介の口から『鈴子』って名前が出ることも辛い。
「あぁ、さっき会った。俺ん家に行ったけど留守だったって。コレ、渡しに来ただけだから!また、変な心配してたんだろ?」
隆介は玄関に投げた紙袋を指差す。
私はその紙袋を拾い上げ、中から箱を取り出す。
「あ!みーたんのエサ?」
いつか隆介がりゅーたん用にくれたハムスター界では有名な美味しいエサ。
な~んだ、鈴子からもらってたんだ。
「お前も半分持って帰れよ!」
上着をバサって私の頭に乗せた隆介は、洗面所にうがいをしに行った。
いい匂い。
布団の匂いとはまた違う、外の隆介の匂い。
私はその上着を抱きしめて、言い聞かせる。
『大丈夫、隆介を信じるんだよ』
・・・玄関で上着を抱きしめながら一人目を閉じていた私を、隆介が不思議な顔で見てた。
「お~い、美亜。そんなに俺が好き?」
彼氏になった隆介は、どんどん私の理想の男になっていく。