いつもの低い声が少し上ずってるよ・・・
いつものあんたじゃない事が、より悲しみを大きくする。
私にはできないから・・・
隆介をこんなに必死にさせること、できないから・・・
「待てって!鈴子、ちゃんと聞いてくれよ。」
音だけで想像できる。
今、私の好きな人は、違う女の腕を掴んでる。
何度もときめいた隆介の手。
強引で荒っぽくて・・・だけど優しく私の腕を掴むんだ。
今・・・
鈴子の腕を掴む隆介の手。
やだ・・・
やだって!!
その手に掴まれるのは、私だけなんだって信じてた。
冷たい隆介だけど・・
最後には私を選んでくれると信じてた。
「ずっと・・・言えなかった。高校の頃から、鈴子が好きだった。」
きっと一生忘れない。
その言葉。
その声。
風の音。
胸の痛み・・・
そんな声出すんだ。
好きな女に気持ち伝えるときのあんたは、すごく・・・かっこいいよ。
素敵だよ。
また、あんたのかっこいい所を知っちゃったじゃん・・・
ずっと言って欲しかった『好き』って一言。
欲しくて欲しくて仕方がなかったその二文字を・・・
隆介は私じゃなく、
鈴子に
あげた。
本当はその場を離れたかった。
隆介の優しい声を聞くのが辛くて、逃げ出したかった。
だけど、体が言うことを聞かなくて・・・・・・・・・
なるべく声を聞かないように努力したけど、あんたの声はどうしたって聞こえてしまう。