隠れなきゃと思ったけど、体が動かなかった。
だけど・・・
隠れる必要がないくらい、私の大好きな人はある女性だけを見ていた。
私がここで、隆介の名前を呼んでも・・・きっと隆介の耳には届かない。
それくらい、隆介・・・
周りなんか見えていない。
これが夢であってくれたら・・・と思いながら、ただボーっとその場にいた。
大きな木の影に隠れたベンチで、私は大好きな人の告白シーンを目にする。
自分ではない他の女性に告白する場面なんて、なかなか見ることができない。
貴重な体験…
冷静な自分と、泣き出しそうな自分。
鈴子は、健太の彼女で・・・
鈴子は高校時代の友達で、今は同じバイト先で働いている。
ただそれだけ…
だけど、いつも気になってた。
その理由がやっとわかった…
隆介のこと大好きだから、あんたのことならわかるんだ。
あんたが鈴子に対して、特別な感情を抱いていること・・・
最初から気付いてた。
あんたが、否定すればするほど、私の中では大きく大きく膨らんだ疑惑。
やっと・・・
私は、ラクになれる。
やっと、隆介の魔法から解き放たれる。
もう、あんたのことでドキドキして眠れなくなったり
あんたの言動に一喜一憂して、喜んだり・・・泣いたり・・・
そんな日々が終わる。
もう疲れたよ。
やっと、元の美亜に戻ることができる・・・