「も……しもし?」 「なんかお礼言いたいんだって?」 低く響くハスキー声。 手の震えが収まらない。 「あの…このあいだのバスで助けていただいて。ぜひお礼がしたくて…あの、連絡先を……」 「いいよいいよ、お礼なんて。大丈夫だから気にしないでいいから。」 「あ、でも……」 その時、チャイムが鳴って、電話は切れた。 つながりは生まれなかった。 .