私が亜季ちゃんのところに持ってくる本は、全て愛人のもの。


このシンデレラは、愛人が亜季ちゃんくらいのときに、一柳さんが愛人に読んであげたんだって。


世界の童話、日本の童話、男の子向け女の子向け関係なく、一柳さんは愛人に本を与えた。


だって、大人しく本を読んでることくらいしか、愛人には出来なかったから。


まあシンデレラは、愛人の興味を引かなかったみたいだけど。


愛人がアメリカに向かう前、一柳さんと一緒に愛人の部屋を整理してるときに、いろいろ話を聞いた。


愛人の本好きは、一柳さんが小さいころから愛人に本を与えていたからみたい。


亜季ちゃんの病室に向かう前、私は愛人の部屋に寄って一冊の童話を持ってくる。


愛人の部屋は私に愛人の全てを思い出させる。


まだ離れて少ししかたってないのに、寂しいって思いが胸を締めつける。


愛人の部屋に行くのなんか、やめればいいのに。


そう思うけど、亜季ちゃんに本を読んであげるため。


うんん、私が少しでも愛人を感じたくて。


足は自然に、愛人の部屋に向かっていた。


「おしまい、おしまい」