「美結。お前、人にもマー君なんて言ってるのか?」


心底呆れたように、愛人がため息をつく。


「だって、マー君はマー君だし・・・」


「まあ、美結だからしょうがないか」


そう呟くように言った後、ポンポンと私の頭をなでた。


「ふふっ。なんだか美結ちゃんたちお似合いね。じゃあ、病室戻るわね」


「はい」


「バイバイ。お姉ちゃん、お兄ちゃん」


「バイバイ」


亜季ちゃんに手を振って、私たちも病室に向かって歩き出した。


「あの子、何の病気なんだ」


私の手を引きながら、小さな声で聞く愛人。


「癌だって。髪の毛、なかったでしょ?全部、治療で抜けちゃったんだって」


亜季ちゃんは、髪の毛がない。


だからいつも、かわいいバンダナが頭に巻かれていた。