「私だけじゃダメなの。私がどんなにマー君のこと好きでも、それだけじゃダメなんだよ」


愛人が生きたいって思うには、私だけ好きだって言ってもダメなんだ。


ずっとずっと、親に愛されてないって思って生きてきた愛人。


親の気持ちが愛人に届かない限り、愛人は生きたいって思わない。


「きっと、愛人君のお母さんも辛かったのね」


「自分が責められて、どうすればいいのか分からなくなったんだな」


「うん」


右側にパパ、左側にママが私に寄り添う。


「愛するってな、美結」


「うん」


「一番簡単で単純なことで、一番難しいことだと思う」


「簡単だけど、難しいの?」


顔を上げて、パパを見る。


「簡単なことほど、一回分からなくなるとなかなか答えが見つからないことがあるだろ?」


「うん」