「あの子が生まれて病気が分かって、私散々責められたわ。主人の両親に。妊娠中の過ごし方が悪かったとか」


そこまで言うと、またおば様はコーヒーを口にした。


「主人にも、そんなこと言われてるなんて言えなかった。あの子が生まれたときは、ちょうど会社のことが忙しくて、家に帰って来ないことがしょっちゅうだったから」


淡々と語るおば様に、私は何も声をかけることが出来なかった。


「そんなこと言われてるうちにね、いつの間にか私、あの子のことどう愛していいか分からなくなっちゃった」


微かにおば様の手が震えている。


「おかしいのよ。誠のことは抱きしめてあげられるのに、あの子のことは抱きしめられない」


「おば様・・・」


「ごめんなさいね。美結さんにこんな話して」


ぎこちない笑顔を浮かべるおば様に、私はプルプルと首を横に振った。


「美結さんは、あの子のことが好き?」


「はい」


「そう。私の分まで、あの子のこと愛してあげて」


きっと愛人の病気は、おば様のせいじゃない。


それなのに責められたおば様は、どんなに心苦しかっただろう。