「おば様、愛人さんに会ってないんですか?」


「あまりね。あの子も私と話す気ないみたいだし」


そう言っておば様は、コーヒーをすすった。


「あの子、これからどうするつもりかしら?」


「おば様は、愛人さんに手術のことを言わないんですか?」


「ねえ、美結さん」


「はい」


「私が今から言うことは、母親失格だと思われて当然のことだと思う。それでも、聞いてくれるかしら?」


切なそうに笑うおば様に、私は静かにうなずいた。


「あの子に生きて欲しいでしょ?って聞かれて、私は今即答出来ない。正直、分からないわ。あの子に生きて欲しいのか」


「おば様・・・」


カタッと音を立てて、おば様はコーヒーの入ったカップをソーサーに戻す。


「誠が生まれて幸せだった。あの子がお腹にいるって分かったときは、もっと幸せだった」


昔を思い出すように、おば様の視線は窓の外に見える小さな子供たちに向く。


その顔には、柔らかな笑みが浮かんでる。