「なんで、マー君なの?」


わからない。


なんで愛人なの。


なんで愛人が病気なの?


「美結様、愛人様を信じてください。きっと元気になられます」


今の私に、一柳さんの言葉は気休めにすらならない。


「美結様、お家までお送りいたします。辛いことを申し上げました。受け入れられないことかもしれませんが、今日はゆっくりお休みください。それからまた、美結様の笑顔を愛人様に見せてあげてくださいね」


一柳さんは立ち上がると、私の傍まで来て私を立たせてくれた。


「マー君は?」


「しばらく入院されます。会いに来ていただけますか?」


一柳さんの優しい笑顔に、私は小さくうなずいた。


泣き腫らした顔で家に帰ると、ママがどうしたの?と私に聞いてきた。


「そう。愛人君が・・・」


ママの目から一筋の涙が零れる。


その涙を見たら、せっかく止まっていた涙がまた溢れだした。