急に止まった愛人についていけなくて、2・3歩前を行ってしまった私は後ろを振り返った。


「忘れてた」


「ん?」


その言葉を不思議に思って首をかしげると、愛人がそっと私の手を取りゆっくり歩き出した。


あっ、手つないでくれた。


愛人の手から伝わる心地よい体温。


「マー君の手、温かいね」


「そう?」


「うん」


「でも言うじゃん。手が温かい人は、心が冷たいって」


「そんなことないよ。マー君優しいもん」


「俺は優しくないよ」


「そんなことないよ」


「ほんとあんたって、よくわかんない。俺のこと優しいなんて言うんだから」


「マー君!」