「そっ。なら笑っててよ。せっかくデートしてんだから」


窓から外を眺めながら、愛人がポツリと呟いた。


「約束もしてないくせに」


「悪かったな」


愛人が私の頭をチョンと小突く。


「でも嬉しかったから、許してあげる」


笑顔を向けると、愛人も少し笑ってくれた。


しばらくすると、ショッピングモールの近くをバスが走り出した。


どうせならお店の中まで行って欲しいのに、500メートルくらい手前でバスが止まる。


そこで降りて、歩いてショッピングモールまで行く。


愛人が道路側を歩いてくれてるけど、手はつないでくれない。


せっかくデートしてるんだから、手つなぎたいな。


さっきはつないでくれたのにな。


そう思って愛人の隣を歩いていると、急に愛人の足が止まった。


「マー君?」