「おばあちゃんはね、ママのお母さんが亡くなる前に手紙をもらっていたの」


「どんなの?」


「私はたぶんもうすぐ死ぬから、美和ちゃんのこと面倒見てくれないかって。もしあの約束を覚えていたらって」


「あの約束って?」


「パパとママは、小さいときに会ったことがあるの。ママのお母さんがやってたお菓子作りの教室でね。ママはまだ赤ちゃんで、パパもそうね、6・7歳だったかな。なんかね、二人ともお互いのことが気に入ったらしくて」


おばあちゃんは昔を懐かしんでるように話す。


「ママのお母さんが、パパに言ったの。龍矢君が大きくなったら、美和のことお嫁さんにしてくれるって。あらいいわね~って、私もそう答えたの」


「それで?」


「おばあちゃんは、そのお菓子作りの教室をやめちゃったんだけど、ママのお母さんとは手紙のやり取りなんかしててね。ある日もらった手紙に、そう書いてあったのよ」


「おばあちゃんはなんて返事したの?」


「もちろん覚えてるわって。美和ちゃんのことは任せてって、送ったの」


「ふーん」


「ママのお父さんも、ママが赤ちゃんのときに亡くなってね。ママのお母さんが、一人で美和ちゃんのこと育ててるの知ってたし。頼れる親戚もいないって聞いてたから」


またおばあちゃんは、紅茶をすすった。


「それから?」