「えっ?」


「パパとママは、好きで結婚したわけじゃないんでしょ?」


前に聞いたことがある。


ママのママ、つまり私のおばあちゃんが亡くなってママがパパのところに来たって。


それで、いきなり結婚しなきゃいけなくて。


始めは好きじゃなかったって。


「美結ちゃん、今の美結ちゃんとあのときの美和ちゃんの状況は違うわ」


おばあちゃんが、私を諭すように話しだした。


「あのときのママには、パパしかいなかった。大げさだけど、そこで結婚しなかったら生きていけないくらいにね」


「そうなの?」


「ママのママが亡くなって、美和ちゃんには頼れる人がいなくなった。頼りになるのは、亡くなる前にお母さんが残してくれた手紙だけ」


「うん」


「ここに来て、初めてパパと結婚しないといけないって知った。ほんとは嫌だったと思うわ」


「うん」


おばあちゃんが紅茶をすすって、一息ついた。