「これは、失礼いたしました」


一柳さんが、ニコニコ微笑んで愛人に謝った。


「絶対反省してねえ」


「いいえ、してますよ」


仲いいんだなって思った。


なんか、一柳さんと話してる愛人って、今まで私が見て来た愛人と全然違う。


これがほんとの、愛人かもしれない。


怒った表情も、照れてる表情も。


今まで見たことない愛人だった。


「あの、私帰ります」


お茶をし終わった私は、二人にそう告げて立ち上がった。


「ご夕食でも一緒にどうですか?」


「折角ですけど、母に早く帰って来るよう言われてるので」


「そうですか」


一柳さんが、残念そうな顔をした。