箱を渡して、部屋の中に入った。


広い部屋だった。


大きな窓からは夏の暑い日差しが降り注いで、部屋中を明るくしていた。


それでも部屋の中が暑くないのは、静かに動いているクーラーのおかげ。


部屋の中は、勉強机と本がいっぱい入ってる本棚。


それに、一人で寝るには広過ぎるベット。


そのベットに、足を投げ出して、いつものように本を読んでる愛人がいた。


「あの、こんにちは」


最初に私の口から出て来た言葉は、なんともつまらないあいさつだった。


「なにか用?」


愛人が面倒臭そうに、少しだけ本から顔を上げた。


「そのっ、元気かなって思って。あれから学校来なくなっちゃったし」


愛人の目が、大きく見開いた。


「なに?心配してくれてたの?」


そう言って愛人は、ニヤって笑った。