「で、あるから―――」


国語の授業中。

何故か、朝の出来事が頭から離れてくれない。

ずっと頭の中をグルグルと駆け巡って、思考回路を浸食している。


千佳君、なんか変だった。

意地悪なのはいつもだけど、なんか切なそうだった。

切なそうって言うか、なんか――。


「聞いてるか、不破」

「へ?」


ぬっと、頭上に何かの影が落ちた。

声の元は影からで、見上げれば先生が額に青筋を浮かべていた。


―や、やばい…っ!!


「不破、お前放課後職員室来い」

「…はい」


半目で見られ、縮こまるしかなかった。


―キーンコーン…。

授業終了を告げる鐘が鳴り、教師は教卓に荷物を取りに戻ってそのまま教室を出て行った。


ざわざわと静かだった教室が騒がしくなる。

皆が待ちに待った昼休み。

騒がしくならないはずがない。


「いーずみっ!」

「ぐへっ!」


ぼーっと考えていると、後ろから衝撃。

思いの外強い衝撃に奇声をあげてしまった。


ぐへって、女の子出す声じゃない…。


「相変わらず間抜けだー」


花のように笑いながら貶してくる、亜希ちゃん。

あの、失礼なんですけど…。


「さ、お昼だよっ!」


明るい声と先程の出来事に、考えていた事を綺麗サッパリと忘れていた。