―キーンコーン…


「今日の授業はここまで」


教師の一言に途端に騒がしくなる教室。

今日はもうこの後LHRをすれば授業は終わって帰ることが出来る。


「もう夏休み…」

「ついでに明日から40分短縮編成」

「ぅわ!」


独り言としての呟きには返事があって、それはいつの間にか隣に席を陣取っていた千佳君からだった。


心臓に悪い。

驚きからきた動悸がやけに体に響く。


責めるように睨み付ければクスリと笑われた。


(にゃろー…)


「なぁ、和泉」

「なに?」


一瞬、真摯な眼差しと視線が交差した。

錯覚だと言うには無理な距離。


「夏休み中予定ある?」


直ぐにいつもの穏やかな目に、やっぱり今のは見間違いかと思う。

今眼前にある目はあまりに通常的過ぎる。


「えっと、」


特に決まった予定はない。

恐らくこれからも入ったりはしないだろう。


「無いなら、俺と遊ばない?」


肘を机に突いて誘う千佳君は、夏の陽射しを浴びて格好良かった。