廊下を通る時窓の外を見つめる姿を見て、あぁ好きなんだと思い知る。

その瞬間が何より苦しくて、好き。


「杏奈」

「なに?」

「お客さんだよ」


初めて来る人だと、呼んでくれた子が付け足すように教えてくれた。

いつも訪問してくる人は限られていて、そのほとんどが由貴だったのは今では少し苦い思い出。

珍しいと席を立つ。


「えっと、…」

「ねぇ」


どうしようかと悶々としていると遮られた。

ふわっとした声のわりに鋭く鼓膜を振るわす。


「久野さんって、平野君好きなんでしょ?なんで?」


あまりに直球過ぎる質問に思わず顔を顰めた。

いきなりなに、この人。

睨むような視線になってしまったかもしれない。


「どうして自分を見てくれないのに、思い続けられるの」

「――っ」


ねぇなんで?声に出さずに問われる。

ふわふわとした雰囲気を裏切る鋭利さが、自分の閉じきれない思いを捕らえた。