薄暗い帰り道。

空に広がる夕日の朱が僅かに灰色で翳って、しかしそれさえも鮮やかに映る。


「えっと…」

「なに?」

「いや、ありがとう」


隣を歩く千佳君に声を掛ける。

散々泣いたあの後、親切にも千佳君は家まで送ってくれると言ってくれた。


「いいよ、一緒に居たかっただけだし」

「っ、」


千佳君の言葉に、頬が熱くなる。

恥ずかしげもなくさらりと言ってのけた台詞の威力は充分で。

恥ずかしすぎる。


「着いたよ」

「え、あ、ありがとっ」

「いいえ」


ふっと、微笑む。

穏やかな笑みに呆けながらも見惚れた。


すっと、顔が近付く。


「えっ…」

「おやすみ、良い夢見ろよ」


意地悪く笑った千佳君は、いつもの彼で。


キスされた瞼から、熱が広がっていく気がした。