落ち着くのは体温にか、それとも。


「…もー、ホントにすみません」


ずずっと、鼻を啜って話しかける。

どうして泣いたんだ自分、いや、理由はわかってるけど。

自己嫌悪に陥りそうになって、直前で留める。


「もういいんだ?」

「…はい」

「もっと泣けばいいのにな」


ご冗談を。

最近は泣いてばかりで、いつの間に泣き虫になったのか知りたい。

未だに抱きしめられている状態に気を向けたくなくて、意識を逸らすように無駄に頭を回転させる。


「なんで…?」

「え、可愛いから」

「…。」


駄目だ。

いくら逸らそうが、千佳君の爆弾発言に一気に思考が引き戻される。


「ってのは冗談で」


くくっと喉で笑う千佳君。

その時の振動で、自分も一緒に僅かに揺れた。