視界を潤しているであろう雫を溜めた双眸が此方を向く。

無機質に煌めいた。


「…和泉」

「ご、め…っ」


泣いている。

しかし、なのに和泉は逃げない。

泣きそうになればいつも何処かへと逃げてしまうのに。


和泉は、逃げない。


「…っ、泣きたいんじゃ、ない」

「あぁ」

「でも、なが、れる…っ」


泣きたくない、それなのに。

我慢の限界だったのか。

それに拍車を掛けたのは明らかに自分だった。


「千佳く、んっ」


手が伸びる。

震えながら、弱々しく怖がって。

それでも助けを求めるように自分へと伸びてきた手。


―ぐ…っ


「なに?」

「千佳君…っ」


抱き寄せる、小さな躯。

制服のワイシャツを握る力は先程と違って変わらずの熱を持って強い。