彼、松里千佳は由貴君の幼馴染みで、何故だかちょっぴり私に意地悪だ。




「千佳君っ!」

「…あ、なんだ和泉か」

「なんだって、なんですか」


朝登校中、前を歩く千佳君を見つけた。

一人で歩いていたから何の迷いもなく声を掛けたは良いが、なぜか残念とでも言うように返事をされた。

…失礼な奴だ。


「…おはよう」

「うん」


仕方ないと思い考えを切り替えて挨拶をすれば、帰ってきたのは挨拶ではなく「うん」の一言だけだった。

…って、おいっ!


「うんって、挨拶の返事がそれっておかしくないっ!?」

「なに、"俺から"の挨拶が欲しいの」

「な、な…っ」


クスリと笑われる。

思わず、わざと強調された部分に反応して赤面してしまった。


「まさかっ!私にはちゃんとした彼氏がいるんですーっ!」

「うん、知ってる」


ちょっと大きめに反論したら、テキトーに返された。

随分とおざなりな態度に多少むっとする。

だが、むっとするも、特に何か言うことがあるわけでもないから何も言えないで終わってしまった。


そのまま、テキトーに会話をしながら学校に着いた。

さすがにこの時間帯に多くの人はいない。

この時間帯にいる人と言ったら、部活の朝練がある人か、勉強しようとこの時間帯を狙ってやって来る人の二通りが多い。