隣で呆れられたような溜息を吐かれる。

鬱陶しい、思っても口には出さないで視線で訴える。


「やだぁ、アイコンタクト?愛をかんじちゃーう」

「マジで滅びろ」

「あはっ」


何故コイツが自分の中学からの友達で、しかも隣に座れる程に仲が良いのか本気で疑問だ。

しかもいつもはうざったいほどにおちゃらけてるのに、嫌な時に突然大人の面を見せ、現実を突き付けてくる。

何故、仲良くなったんだろう。


「イズミさんだろ?」

「…。」


また、だ。

先程の祐志とは似ても似つかない雰囲気。

馬鹿にしてはいない、けれどお前よりは現状を理解しているよ。見透かすその視線が突き刺さって直視出来なくなる。


「でも、多分より戻すだろうな」

「…。」

「俺もう由貴の背中押しちゃったし。話を聞く限り、イズミさん引きずりまくりだし」


だから、困っているんだ。

由貴を廊下で見かけるたび切なげに瞳を揺らしながら見ていること、1組の前を意識的に且つ徹底的に避けていること。

まだ想っているんだと切実に語る姿が、嫌になる。

奪うことが出来ないのだと、眼中にもないのだとわかる彼女に何も出来ない。


「でも、由貴は最後には必ず久野を選ぶよ。絶対」

「…だから?」


それは、俺も心の内で思っていることだ。

由貴は杏奈を、自分でも気が付かないうちに誰よりも大切にしている。

だから、


「奪えよ、由貴から」


だから、必ず和泉はもう一度傷付く。

その姿は、もう見たくない。