「和泉…俺」

「あ、杏奈さんはっ!」


遮って、自分でもなぜこの話題を選んだのか不思議だけれども止めることは出来ないと、杏奈さんの話題を続ける。

あげた声は荒かった。


「杏奈さんは、由貴君が好きで」


好きで、幼馴染みという関係を崩す事を躊躇わなかった。

ただ、好きだから。


「由貴君の本当の一番は杏奈さんで」


言った言葉が、心を抉る。

突き刺さる、垣間見た本心は酷く鋭利で。


「だから、私は―」

「和泉」


名前を呼ばれる。

遮るように、もう続きは聞きたくないんだとばかりに空気を振るわせた声は耳に付く。

あぁ、駄目だ、何が駄目だなんてわかるのは誰でもなくて。


「俺は和泉が好きで、杏奈が好きなわけじゃないんだ」


だからお願い、そんなこと言わないでよ。

言葉の裏に孕んだ意味を理解して、あぁ、どうして気付くの自分、でも嬉しいと思うことは否定の出来ない事実。


「もう一度、俺にチャンスをくれないか?」


チャンス、だなんて。

そんなものを作れば、直ぐさま、またあの狭すぎる視野の世界に引きずり込まれてしまう。

わかって、いるのに。


「っ、」


どうして、何も言えないのだろう。