取り残された遥はふっと口元を持ち上げ、綺麗な孤を描いた。

その表情は先程の甘さなど微塵も感じさせない代わりに、酷く艶やかだった。


「若いねぇ…」


自身も充分若いのにも関わらず、遥は呟く。

楽しさが、声にも滲んでいた。

―嫉妬か。

先程の千佳を思い出す。

焦っていること、嫉妬していることを隠すことなく表に出していた彼。

浴衣なのを無視して走ったのだろう。

きっと苛立ちながらも、必死になったはずだ。


「一途だねぇ」


クッと喉で遥が笑う。

気付いたのは、授業を受け持ってすぐのこと。

彼の彼女を見る目は惜しむことなく愛情を表している。

触れる彼の手は優しくて、見つめる瞳は甘い。

全身で閉じた想いを伝える彼はとても滑稽で、勇ましい。


―せいぜい足掻けよ、和泉。


これから彼女は辛くなるだろうに。

それでも自身をぶつける術を知らない哀れな彼女はきっとまた泣き崩れる。

支えるのは、自分か、それとも。


今日のメインイベントが気掛かりだった。