「………」

「………」


恐る恐る振り向くと、其処には猫が気持ちよさそうに横になっていた。

ごろごろと喉を鳴らしている。


「……」

「……ふふっ」


沈黙に耐えきれなくなって、堪えていた笑い声をあげる。

先程の雰囲気が跡形もなく消える。

今此処にあるのはいつもの穏やかな雰囲気だけだ。


「はぁー…。…マジ最悪」

「あははっ」


まぁ、邪魔をしてきたのが猫の鳴き声なのだ。

力は抜けて当然だし、艶めいたものもぶち壊されてしまうのも無理は無いはず。


「じゃあ、また明日ね」

「おー。じゃあな」


言って直ぐに背を向けて歩き出す由貴君。


先程まで彼が触れていた所が熱かった。