七夕祭、開催です。
「いらっしゃいませーっ!」
後ろに花がまき散らされていそうな笑顔で、お客さんを出迎えるクラスメイト。
皆楽しく、満喫したように七夕祭の係をやっている。
私はその光景を一人壁に寄りかかりながら眺めている。
「見事なまでに、なんの問題も生じなかったな」
「…つまらなさそうに言わないで下さい」
…違った。
一人じゃなくて、大月先生と、だ。
なぜこんな所に先生がいるのか不思議で堪らないのだけど、聞こうとすれば笑顔で威嚇される。
しかし、
「先生どこかなー」
「あっちはー?」
「こっちいなーい」
外から聞こえてくる高い声に何となく想像が付く。
…ご苦労様です、先生。
まぁ、確かに先生の浴衣姿見たいよね。
ラフな格好でさえ、絵になるのだから是非とも浴衣姿もお目に掛かりたいのだろう。
「…先生、私別れました」
「…。……そ」
興味無さそうに返事をされる。
どうでもよさそうな態度が、何故だか酷く安心した。
「…。……嬉しそうじゃねぇな」
「そう、ですかねー」
「むしろ落ち込んでるな」
だって。
はっとして、自分に制止を掛ける。
いけない、いけない。
相手は教師で、仲が良いとか、親戚だとかそうゆうわけじゃないのだ。
口を滑らせたりだなんてしてはいけない。
「…まだ、好きなら振らなきゃよかったのにな」
「先生、自分で言ったこと覚えてます?」
この人が言ったのだ。
別れた方がいいと。
私に、事実を突き付けてきたのだって、大月先生この人なのだ。
なのに、矛盾している。
「言ったな。でも、強制してない」
「…でも、その方が由貴君のためですよ」
沈みそうになる声を必死に平静に保つ。
笑えそうな自信は無いから、顔は下を向いたままだけど、でも、声だけでも明るく保ちたかった。