「振られたんだってー?」
「…うるせー」
けらけらと笑いながら俺の前の席に着く中学からの友人。
その声は至極楽しそうで、嫌味なほど明るく弾んでいて、俺の神経を見事なまでに逆撫でしてくれた。
「ま、その不破さんだっけ?正しい選択したよなー」
「は?」
思わず出た低い声におー、怖っ!と思ってもいない事を言うソイツ。
…うぜぇ。
苛つきながらも、引っ掛かったことを尋ねる。
「正しい選択って?」
「だから、お前と別れて正解だってこと」
その言葉に当然のようにショックを受ける。
別れて正解って…?
余程怪訝な顔をしていたのだろう、説明を更に重ねてくれた。
「お前自覚無いのかもしれないけどさー、彼女を見る目と久野見る目同じなんだぜ」
「え…」
同じ、って何が?
目?
目って、一体どうゆうことだよ。
余計に頭がこんがらがっていく。
問いただすように再び視線を投げつければ、苦笑いしながら答えだす。
「だから、目が好きだって言ってんだよ」
「誰が、誰を」
「お前が、久野と彼女を」
ちょっと、待て。
彼女は納得出来る。
でも、どうして杏奈なんだ。
杏奈は幼馴染みで、べつに俺としては恋愛対象なわけじゃない。
なのに、どうして。
「…。心より、本能の方が信用出来るぜ」