「若いな、お前等」

「っ、せ、んせい…」


誰もいないと思っていた教室の、奥から声がした。

奥と言っても、普通に教室の窓辺に居たけれど。


話しかけてきたのは、我が校きっての自慢の教師、大月遥先生だ。

文句なしの容貌は歳を増す事に磨きがかかっている。


「…なんで、ここに」

「此処は数学準備室だけど」


若干引け気味に尋ねる。

返答は、呆れを含んだ声で返される。


「青春してるな」

「な、…っ!?」


なんともオヤジ臭い。

なのに、この人が言うと何故かそう感じられない。


美形は特だよね…。

しみじみと実感して、自分が虚しくなる。


「…。…お前、平野と別れた方が良いよ」

「は?」


いきなり何を言い出すんだろう。

まず、どうして教師であるこの人が、私と由貴君が付き合っているのを知っているの。


かちっと、煙草に火を付けた先生。


ふっと、煙草の煙を吐き出すと笑った。

その姿も、文句なしに格好いい。


「わかってるくせに」