もう、なんでもいい。

この気持ちが狂気じみたものでも。

選んだ選択肢が、間違って、どれだけ道徳から背いていようとも関係ない。


もう、なんだっていい。

いいから、こっちを向いて。


「由貴」

「っ、…あ、杏奈か…」


勢い良く振り向いた由貴は、振り向いた先にいたのが私であったことに残念そうな顔をする。

しかし、それはまるで幻覚のように一瞬で消えうせ、明るい笑顔をみせてくれる。


ここに居たのが私じゃなかったら、よかった?


当たり前だ。

だって、あの子は由貴の"彼女"なのだから。


「どうした?」


異変に気付いたのか由貴が心配そうな声を出す。

その声に、良心が痛んだ。


もう、なんだっていいの。

本当に。


「由貴が、好きなの…」

「えっ?」


抱き付いて、告白する。

私の言葉に、行動に、由貴の鼓動が変わるのを確かめたいから。

私を意識しているかもしれないことを、実感したいから。


驚く由貴の声と共に、鼓動が音を立てる。


それを聞いた瞬間、あぁ、勝てる。

由貴を手に入れられると、本能的にそう思った。


「ずっと、ずっと、好きだったの」


私達は、幼い頃からずっと一緒で。

だから気が付かなかった。


貴方に彼女が出来るまで。

私以外の人に、その眼差しを貴方が向けるまで。


「お願い…っ」


何がお願いなのか、わからない。

でも、もう少しだと思ったら、どうでもよかった。


お願い、傾いて。

コッチを向いて、私を見て。


「杏奈、俺…」