いつからか、忘れたけど。

でも、嫌いなのは、嫌いになったことは覚えてる。


ぼんやりと霞む思い出の中。

嫌いになった瞬間は、鮮明に覚えてる。


それだけは、覚えてる。


「じゃあ、この書類不破に頼んでいい?」

「あ、うん」


何枚かのプリントが束になって、まとめられた書類を手渡される。

今日決めた、七夕祭に関する書類だ。


「じゃあそれ、職員室だから」

「りょーかーい」


頼んだ、という声に間延びした返事をする。

書類を両手で掴み、席を立つ。

今この時間、LHRは、今月中に催される七夕祭のために割り当てられている。


「よ、いしょ」


席を立つとき感じた心配するような視線は無視をして、用事を済ませようと急いだ。


「…。……。」


教室では、千佳君が険しい顔をしていて。

私が出た、廊下へと続くドアの反対側に居た杏奈さんは口元を持ち上げていた。



感じた嫌な予感は、今日的中する。