いけない。

それは、本能が示した、警告だったのかもしれない。


「早くしろ」

「え、と…」


なんて言って、断ろう。


腰が抜けました?

いやいやいや。だったら尚更助けてもらうべきでしょ。


恥ずかしくって、出来ません?

却下。そんなこと言う方が恥ずかしいし、馬鹿げてる。


―ぐいっ


「え…」


考え込んでいたら、待ちくたびれたのか千佳君が私の腕を引っ張って立ち上がらせた。

しかし、足には力なんて入っていなかったため、ぐらりと千佳君へと倒れ込んだ。


「遅い」

「っ」


前に由貴君に言われた言葉。

同じ言葉だったのに、どういうわけか千佳君の台詞は心臓を鷲掴みにされたような錯覚を覚えた。


「~~~っ」


優しく、包み込まれている。

慣れていないせいか、心臓が千佳君にまで聞こえてしまうんじゃないかってくらい高鳴る。


顔が、耳が、熱い。