「あ、あの…っ」
可愛らしい女の子が、一人の男子生徒に近づく。
その子の手にはしっかりと何か、もの、が握られている。
その何かは綺麗にラッピングされており、駆けていた彼女によってしっかりと、丁寧に抱えられていた。
「なに」
少々冷めた物言いをする男子生徒A。
そんな彼に一瞬、彼女はびくりと肩を振るわせたが、直ぐに気を取り直して花のような愛らしい表情を浮かべてまた近付く。
そんな彼女にバレないようにこっそりと男子生徒Aは溜息を付いた。
ホントに、こっそりと。
「私、先輩の事が好きですっ!もしよければ―――」
「え、無理」
可愛らしい彼女の心を込めた愛の告白も虚しく、彼は全てを言い終わる前に言葉を打ち切った。
「そんな…無理って、酷い…っ」
そんな男子生徒A――もとい、平野由貴は自分の言葉に涙している彼女を気にする事無くさっさと足を進めた。
そんな彼の恋人である私――不破和泉と彼の幼馴染みである松里千佳は教室の窓辺からその様子をばっちり覗き見していた。