別の楽器を選べば良かったのだろうか。


英二は音楽家志望、僕は何も考えていない。


ユーフォニュームを膝に置いて、僕はぼんやりと、なっちゃんを見詰めた。


…歌ってる?


なっちゃんは曲のメロディを口ずさみながらスティックを操って自分の中で曲を組み立ててるんだ。


僕は、はっと気が付いた。


曲はじぶんの中で消化しなければならないんだ。


なっちゃんの額には、うっすらと汗が滲んでいる。


それくらい集中してるんだ。